[フリウル / 本編終了後 / ピロートーク]
「そんなに気にすることか」
「…………」
太い眉毛がへにゃりと下がっている。無言で向けられた顔がまるで飼い主に怒られた犬のようで、ウルフランは笑いそうになったがどうにかこらえた。
ここで笑ってしまうと、落ち込んでいるこの男はますますショックを受けるだろう。フリー・アンダーバーという男は、逞しい体躯を持ちながらも案外繊細なのだ。ウルフランはそのことをよく知っている。
先程とはえらい違いだな、とウルフランは思う。こちらのすべてを奥底から震わせる熱のこもった声でウルフ、ウルフランと幾度となく名前を呼び、ぎらぎらと深い欲を宿した瞳でまっすぐに射抜いてきた男と同一人物には到底見えない。
激しく揺さぶられながら、喰われる──と快楽にまとまらない頭でウルフランは思ったし、今となってはあながち間違いでもなかった。
ウルフランの喉元に、くっきりと歯型がついている。
誰が残したかは確かめるまでもない。そして、つけられた側よりもつけた側のほうがよっぽど気にしているということも言うまでもない。
フリーがそこまで気にする理由がウルフランにはわからない。お前にひどいことはしたくないのだとフリーは言うが、フリーにひどいことをされた記憶はウルフランにない。そもそも今日だって、最初に煽ったのはウルフランのほうだ。
過去、『すべてを終わらせる』という願いを叶えるためにウルフランは手段を選ばなかった。利用できるものは何だって利用した。自らの身体も例外ではなかった。
その時にウルフランを使った連中と、フリーが同じであるわけがない。ウルフランが触れてほしいと思う男は、触れたいと思う男は、ただ一人、フリー・アンダーバーだけだ。
肝心の本人は、どうもわかっていないようだが。
「……うわ、なんだよ」
何も言わずに、ウルフランはわからずやの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。戸惑いながらも、フリーは情けない顔でされるがままだ。存分に髪をかき混ぜてから、ウルフランはフリーの額に残る傷痕を指先でなぞった。
同じ指で、自らの額に残る傷痕に触れる。
「……俺達はとっくに、消えない痕を互いにつけているだろう。今さら気に病む必要はない」
「……っ」
息を飲んだフリーは、やがて悔しそうな、拗ねたような表情を浮かべた。
「……お前、そういうとこだぞ」
「そうか」
ふと思いついたことを、ウルフランは尋ねてみた。
「それとも、俺もお前に噛みつけば満足なのか」
黙り込んだフリーの満更でもなさそうな顔に、ウルフランは今度こそ笑うのをこらえきれなかった。
―――
フリー、案外Mっ気があると思うんですよね……(言うに事欠いてそれ?) くっついた当初はウルフランのことをめちゃくちゃ大事にしていたフリー、いや今もめちゃくちゃ大事にしているんですけど我を忘れてウルフランを求めてしまうことがまれにあり超絶自己嫌悪しているがウルフランのほうはそういうフリーを見るのがまんざらでもない(むしろ好き)という感じです でも落ち込んでいるフリーもそれはそれでかわいい奴だなとウルフランは思っているので……はい……(犬も食わねえ~~~)